私のお姉ちゃんは自慢の姉

私のお姉ちゃんは自慢の姉だ。

例えばテストの点数で九五点以下を取っている姿を見たことが無いし、剣道部の主将を体育の時間に一本勝ちで倒しちゃうし、バレンタインになると大量のチョコレートを入れた紙袋を提げて帰ってくる。

お姉ちゃんは私の姉で、つまり女である。

同じクラスの女子からはもちろん、違うクラスや年下の女の子からもチョコを貰ってくる。チョコだけじゃない。鞄からラブレターがはみ出しているのを見たことがあるし、告白される現場を見たこともある。

容姿端麗。頭脳明晰。才色兼備。文武両道。

こんな感じの四字熟語を全て同じ鍋に入れ、大きなお玉でぐるぐるかき回すとお姉ちゃんができあがる。大げさかもしれないけれど、要はそれくらい完璧な人間ってこと。

お姉ちゃんはモテた。男子からも女子からも、モテモテだった。

けれど、完璧すぎるのが仇になっているのか、お姉ちゃんが誰かと付き合っているという話は聞いたことが無かった。

野球部主将の岡田くん。サッカー部のエース佐久間くん。テニス全国大会常連の鹿島くん。男子高校生で俳優の国枝くん。

テレビに出ているようなイケメンたちから告白されても、お姉ちゃんが彼らに好意を向けることは無かった。

お姉ちゃんはクールだ。クールビューティだ。よく喋る友達と言えば幼馴染の藤島夏芽さんくらいで、他の人とは一定の距離を置いている。

でも、逆にそのキャラクタが良いらしい。ミステリアスなんだそうだ。

私も、気持ちはちょっと判る。

お姉ちゃんは私にもあまり話しかけてこなかった。私もお姉ちゃんにあまり話しかけない。残念ながら、お姉ちゃんに比べて私はあまりにも平凡だったから。私は、少し気後れのようなものを感じていたのかもしれない。

……お姉ちゃんから話しかけてこない理由は判らない。

ただ、あまりお姉ちゃんは人と話すのが好きじゃないのかもしれない。少なくとも私が嫌われていることは無いだろう……と思っていた。好かれても無いけれど、嫌われてもいない。そう思ってた。

けれど、ある日、私は聞いてしまった。

夜のリビング。冷蔵庫を開ける音。飲み物をコップに注ぐ音。

お姉ちゃんが何かに集中していてはダメだと思い、私はこっそりとお手洗いに行こうとした。忍び足で廊下を歩き、息を殺して移動している私に――

「那奈が妹じゃなかったら良かったのに……」

お姉ちゃんの、そんな呟きが聞こえてきた。

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