小説書評

【百合書評】卯月の雪のレター・レター

百合書評第3弾。今回の百合小説は『卯月の雪のレター・レター』。

短編5作が収録された短編集ですが、漏れなく全て百合風味という贅沢さ。

内3編は姉妹百合っぽい雰囲気があり、特に姉と妹の関係が好きな方にオススメです。

前回の百合書評『ココロ・ファインダ』同様、相沢沙呼さんの短編集になります。

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では、全体のあらすじ、そして各短編について感想を書いていこうと思います。

妹思いの姉に冷たくあたるようになった、高校生の妹の変化と不可解な行動の理由とは。クラスで嘘つき呼ばわりされている小学生の女の子が、教育実習生にある事件を目撃したと言うのだが、はたして本当か。祖父に届いた手紙を巡る謎を女子高生が追う表題作ほか、揺れ動く少女たちの心と、温かさや切なさに満ちた謎を叙情豊かに描く全5編。青春ミステリの名手が贈る珠玉の短編集。

創元推理文庫:『卯月の雪のレター・レター』あらすじより引用

女性主人公日常生活に現れた謎を解く、というのが大まかな流れ。

ミステリー×百合を思う存分堪能できる1冊になっております。

今回は短編の1つ目、小生意気リゲットに焦点を当てて感想を。

小生意気リゲット

両親を亡くした姉妹の物語。会社員の姉と高校生の妹は二人で暮らしているが、妹のシホは姉に対して素っ気ない態度を取る。心配する姉に対して「別に」「なにか文句あるの?」「知らない」と、その反応は実に小生意気。大好きだったハズのハンバーグを作っても、シホは残してしまう有様。姉は、彼女がどうして自分を突き放すのが気がかりだった。

そんな中、不可解な話が耳に入る。シホが叔父にお金を借りに行った、という話。シホが家から遠い方のコインランドリーに行って、姉に内緒で何かを洗っている、という話。

彼女がどうして変わってしまったのか。彼女はいったい何をしているのか。

姉は、妹の行動の謎を探る。

短編1本目のこちら、妹想いの姉×生意気な妹の組み合わせ。

両親の代わりに目一杯の愛を注ぐ姉。姉が優しいからこそ、妹には言えない秘密がある。

そんな姉妹の葛藤を描きます。

素っ気ない態度の妹キャラって本当に可愛いという話! 読後感最高です。

 

こそどろストレイ

2本目の『こそどろストレイ』では、物置から花器が消えた理由を推理します。少女3人が事件の謎を追う、という構図はとても良いですね。この作品でも姉妹の関係が描かれています。

本作は姉弟と姉妹を比較する話。自分と弟の関係。友人の姉と妹の関係。

キョウダイをもつ人なら、一度は他の家と比べてしまうこともあるのでは、と思います。確かに友達の姉って優しく見えたり、美人に見えたり、格好よく見えたり……自分の家の事情とは違うように感じますよね。まあ、実はこの感想、あまり内容とは関係なかったりするんですが。

血の繋がりはいつだって残酷で、それでいて強くて、やっぱり切り離せないモノです。

 

チョコレートに、躍る指

3本目の『チョコレートに、躍る指』は一番ビックリした作品。重い雰囲気で進む本作は、少しばかり残酷な話。そして同性の子を好きになるという、間違いなく百合に該当する作品。

私が相沢先生の好きなところは表題の付け方にあります。チョコレートが何を表すのかは、読んで数行ほどで書かれています。躍る指、という意味もそこで把握できます。

でも、それだけじゃない。タイトルが2重の意味を持って、最後にしっとりと胸に残ってくれる。

私の好きな小説とは「しんしんと降る粉雪が、静かに積もり、溶けていく感覚」を味合わせてくれるもの。今回も例に漏れず、胸にじんわりとした心地好さが残りました。

 

狼少女の帰還

4本目の短編。前述のあらすじにある内容になります。クラスで嘘つき呼ばわりされている小学生の女の子・咲良と、教育実習生・琴音のお話。琴音は、咲良の姿を自分と重ねます。

20代の女性が、小学生と接することで学び、成長する物語。推理要素としては弱めに思いました。しかし、重要なのは推理の質ではなく、皆から信用されない少女を信じてあげられるか、という点にあります。

かつての自分は誰にも助けてもらえなかった。でも今の自分は、助けてあげられる立場にある。

ここで言う助けるとは、どういうことか。周囲に馴染めない咲良を溶け込ませることか。それとも、彼女自身の考え方を尊重するのか。はたまた、周囲に訴えかけるのか。

私たちは成長に応じ、周囲と同調することを学びます。学んでしまいます。

でも、本当にそれが正しいのか――自分がしたいこと、すべきことは何でしょう。

卯月の雪のレター・レター

小説のタイトルにもなっている短編の5本目。祖父に届いた手紙。送り主は、かつて死んだはずの祖母から。いったいなぜ――その推理をしていく道中で、主人公は精神的な成長を果たします。

まさに相沢先生らしい作品かと思いました。推理の要素を絡めながら、少女の葛藤や鬱屈を、瑞々しいと言えるほど鮮明に描きます。

中でも印象に残った部分は次の箇所。

わたしたちは、赤い血の糸が繋がった姉妹だけれど、違った生き方をしている。

『卯月の雪のレター・レター』p.280より引用

登場人物の全く異なる短編小説5本。その結論が、この一文に集約されているような気がしました。

 

まとめ
というわけで、今回は『卯月の雪のレター・レター』を紹介させていただきました。

前半と後半でテンションが違うのは、少し間を置いて、2日間に分けて書いたからです。相変わらず手探り感が否めませんね……申し訳ないです。

少しでも私の感想や、本の良さが伝われば幸いです。

ABOUT ME
波沢るい
働き始めて4ヶ月。適応障害を告知され休職中。どうせなら空いた時間でブログ作るかァ! と始めた次第。百合を読み、百合小説を書きます。