小説書評

【百合書評】雨の降る日は学校に行かない

どうも、波沢です。

百合書評第6弾というわけで、今回ご紹介させていただくのは『雨の降る日は学校に行かない』。

一時期百合好きの間で話題になった作品で、私が相沢先生を知るキッカケになったのがこの小説。

相沢先生の作品に対する過去の書評はこちら。

【百合書評】ココロ・ファインダ百合書評第2弾。今回ご紹介するのは『ココロ・ファインダ』。 読んだ直後に紹介したくて仕方がなかったこの小説。 なんて言ったっ...
【百合書評】卯月の雪のレター・レター百合書評第3弾。今回の百合小説は『卯月の雪のレター・レター』。 短編5作が収録された短編集ですが、漏れなく全て百合風味という贅沢さ...

息苦しい青春の中でもがく少女の葛藤と憂鬱を、残酷なほど痛々しく描写する本作。相沢先生の丁寧な心理描写を堪能できる1冊になっております。

ではまず、あらすじから。

保健室登校をしているナツとサエ。二人の平和な楽園は、サエが“自分のクラスに戻る”と言い出したことで、不意に終焉を迎える―(「ねぇ、卵の殻が付いている」)。学校生活に息苦しさを感じている女子中学生の憂鬱と、かすかな希望を描き出す6つの物語。現役の中高生たちへ、必ずしも輝かしい青春を送って来なかった大人たちへ。あなたは一人きりじゃない、そう心に寄り添う連作短編集。

集英社文庫:『雨の降る日は学校に行かない』あらすじより引用

今回も短編6つを収録した、短編集という構成になっています。あらすじに書いてある通りの内容ですが、基本的には沈鬱で重苦しい雰囲気が漂っています。一人称で少女の苦悩を描写するので当然と言えば当然で、完全なハッピーエンドで終了! というものでもありません。

が、相沢先生は、決して読者に不快な気持ちを残しません。あらすじのかすかな希望というのがポイント。全てが万事解決するわけではないですが、少女たちは闇の中で光を見つけます。

私たち読者は、そんな少女たちが踏み出す一歩を見届け、静かな余韻に浸りながら本を閉じます。

じゃあ希望って何。女子中学生の憂鬱って何。具体的にどんな内容なの? というわけで、感想を。今回は短編の1作目を中心に感想を書いていきます。

以下赤枠内は、『ねぇ、卵の殻が付いている』の概要を簡単にまとめたものです。

保健室登校をしている少女、ナツとサエの物語。彼女たちは各々の理由によって、教室に行かず過ごしている。保健室という空間は誰に害されることもなく、2人にとってはまさに楽園のような場所だった。だがある日、サエは「自分のクラスに戻る」と言い出して……。

作中では、「教室に戻る」という一歩を踏み出した友人サエに対し、ナツは祝福してあげることができません。居心地の良い時間を2人で共有していたのに、何故それを終わらせるような真似をするのか。結果的に喧嘩別れをするような形になってしまいます。

痛いほど判る気持ちですね。サエは裏切ったわけじゃない。教室に戻るという行為は後退ではなく、前進です。保健室から出ること。教室に足を踏み入れること。その行為に、いったいどれほどの勇気が必要かなんて、ナツが一番判っているんですよね。人間の感情ってのは難しいものです。

本作でキーとなるモノは卵の殻ですね。

何か1つのアイテムを中心に、キャラクタの心情や成長を表す。相沢先生らしさが出ています。

例えば、作中の序盤では制服についた卵の殻を払います。ですが、終盤では「そのうち取れる」と言ってくっついたまま取ろうとしませんでした。それは何故か……服についた卵の殻が何を示すのかを考えてみると、一層物語が楽しめると思います。

ほか、『好きな人のいない教室』『死にたいノート』『プリーツ・スカート』『放課後のピント合わせ』『雨の降る日は学校に行かない』の5編が収録されています。

教室という狭い空間に、思春期の男女を否応なしに押し込む残酷さ。陽キャだの陰キャだの、今となっては実にくだらないことです。しかし、思春期の少年少女たちにとって、閉鎖空間で格付けされるのは酷く恐ろしいことでした。

虐め。保健室登校。正体の掴めない漠然とした不安。自殺願望。

皆が皆、煌びやかな青春を送ってきたわけではありません。光には影が生れるように、暗く陰鬱な世界に閉じ込められた少女たち。

私たちの生きる現実ではきっと、救いのない物語だってたくさんあります。

だからこそ、少女たちにかすなな希望を与える本作――儚くも美しい救いの物語が、私たちの心にそっと寄り添ってくれるのだと思います。

以上、波沢でした。

ABOUT ME
波沢るい
働き始めて4ヶ月。適応障害を告知され休職中。どうせなら空いた時間でブログ作るかァ! と始めた次第。百合を読み、百合小説を書きます。