小説書評

【百合書評】女ともだち

書評第1弾、今回紹介させていただくのは文春文庫より『女ともだち』です。

百合小説というカテゴリに入るかは怪しいところ。

というか、百合小説じゃないです! ぶっちゃけ! 第1弾なのにね! へへへ!

ですが、私の好きな本なので是非オススメしたいところです。

百合小説と言えるのは8篇中1篇

登場キャラのほとんどが、彼氏持ちだったり、既婚者です。

「女性同士の話がメインならそれでいい!」「男が出てきても良い!」という基準が緩めの方に。

以下、あらすじを引用。

村山由佳、坂井希久子、千早茜、大崎梢、額賀澪、阿川佐和子、嶋津輝、森絵都――
当代きっての人気女性作家8人が「女ともだち」をテーマに豪華競作!
「彼女」は敵か味方か……微妙であやうい女性同士の関係を、小説の名手たちが
描きだす逸品ぞろいの短編小説アンソロジー。
コワくて切なくて愛しい物語の世界を、ぜひご堪能ください。

文春文庫:『女ともだち』より引用

あらすじから判るように、良い意味で癖のある短編が8つ収録されています。

以下では、簡単な説明と感想を。(敬称略)

ただし、短編集ということもあるので、踏み込んだ紹介はしません。

短編には仕掛けが多く、あまり語るとネタバレになってしまいますので。

COPY(村山由佳著)

映画研究会に所属する玲、志緒里、井原を中心とした短編。

ノートのコピーから始まり、女性が女性を真似する、というコピーを題材にした作品。化粧や服装で相手を模倣するのは、女性ならではの題材かと思います。

コピーの話をどう展開させるのかと思って読み進めると、最後にはアッと驚く結末が待っています。百合好き的には大変美味しい終わり方を迎えますよ。

この作品は完全に百合短編になっています。

もう一度言います。めっちゃ百合だから是非に!

ト・モ・ダ・チ(坂井希久子著)

少し怖めの内容。

怖めと言っても心霊現象がどうとかではないです。

孤立している女性を取り込もうとする、女性のお話。

この段階で、「あ、この短編集ってヤバイ」と察知できます。

卵の殻(千早茜著)

この話でも、女性が別の女性に成り代わる、COPYと似たような設定が含まれています。

服装や化粧だけでなく、仕草や喋り方も模倣しています。

友達の幸せを願っての行動。果たしてその行動は、本当に友達のためなのか。

自分の欲求を満たしたいだけではないのか、というお話。

水底の星(大崎梢著)

出版社に勤める明日香。

物語は「死んじまえ」という言葉から、彼女の少女時代を想起することで始まります。

競い合うことの辛さや苦しさ、残酷さが水泳を軸に描かれます。

競争を辞める子。競争から逃げた子。競争に勝った子。競争に負けて、相手を憎む子。

人間だれしも抱く気持ちで、どのキャラクタにも感情移入できます。

こっちを向いて。(額賀澪著)

退職してしまう駒木さんと、仕事上ではなく友人としてお付き合いしたい志保。

しかし、なかなか友人になってほしいと言い出すことができません。

高校時代の友人と、社会人になってから作る友人の違いとは何かを伝えてくれます。

学生時代って、良くも悪くも「友達を作らなきゃ」という感覚がありました。

中学校でも、高校でも、入学してすぐに考えるのは友人を作ること。だから逆に、友人を作りやすい。皆が友達を求めているから。

社会人ってそうではなくって、他に自分のやりたいこと、やらなくちゃいけないことを優先します。だから、逆に誰かと新しく友人になるのは難しい。

考えてみれば、同期とか同僚とか、そういう関係性を抜きにした友人って増えてないかも……と思います。

こっちを向いて。という表題が実に良かったです。

ブータンの歌(阿川佐和子著)

この短編集で一番ほっこりする作品。

中学生の頃の同級生、友人ですらなかったブータンと再会するお話です。

「生涯の友を望まなくなった」「女にはいっときの悩みをきょうゆうできるともだちがいればじゅうぶん」という渡部にとって、打算や損得勘定なく触れ合ってくれるブータンは凄く温かく感じたでしょう。

この短編までに女性たちのドロリとした関係を読んでいる分、一層優しい気持ちになれる作品でした。

ラインのふたり(嶋津輝著)

ライン作業のアルバイトをする亜耶と霧子、そしてライン作業を監視する正社員のジャミラさん。

登場回数自体はそう多くないのですが、不愛想なジャミラさんのキャラが好きです。

こちらもほっこり系。

獣の夜(森絵都著)

『カラフル』『風に舞いあがるビニールシート』でお馴染みの森絵都先生です。

泰介がするハズだった、美也をサプライズ誕生会に誘導する役目。

引き受けることになった紗弓ですが、奔放な美也をなかなか誘導できません。

そんな中、美也はある隠し事を紗弓に告げて……。

獣の夜、というタイトルが2重に効いている作品です。

 

まとめ

いかがでしたか。

初めての書評ということで、自分でもなにを書けば良いのかふんわりしてました。

全体の感想を申しますと、この短編集で多く見られたテーマは『孤立』かと思います。

孤立を恐れて同調する。孤立させて自分に依存させる。印象深かったのはこのセリフ。

女の友情って、一つの御神輿をみんなで担いでる感じなの。『重い』とか『たるい』とかぎゃーぎゃー言いながら、なんだかんだで楽しく運んでるの。ときどき担いでる振りしてるだけの子とか、実は他の御神輿を担ぎたいって思ってる子もいるんだけどね。

『女ともだち』p.193より引用

確かに女性ならではの感覚なのかな、と思います。

女性ならでは、という小説が好みなので、その点でも大満足の一冊でした。

百合かと問われれば百合ではないかもしれませんが、女性の描く女性同士の関係を読みたい方にはオススメの一冊です。

以上、波沢でした。

ABOUT ME
波沢るい
働き始めて4ヶ月。適応障害を告知され休職中。どうせなら空いた時間でブログ作るかァ! と始めた次第。百合を読み、百合小説を書きます。